【永久保存版】初心者必見!パルクールシューズの正しい選び方|メーカーごとのオススメは?【徹底解剖】

2019年5月2日

このエントリーでは、パルクールを10年以上やってきた自身の経験をもとに、初心者から上級者までほぼほぼ全てのトレーサー(パルクールやってる人のことです)に通用するパルクールシューズの正しい選び方を徹底解剖しようと思います。
特に、初心者の方やこれからパルク―ルを始めてみたいという方なんかは、パルクール用のシューズ・靴をどうしたものかよく分からず、困っている方も多いのではないでしょうか?
思ったように動けない、なんだか脚が痛い、失敗して怪我をしてしまった、そういった問題も元をただせば「間違ったシューズ選び」が原因かも知れません。
実際、練習会などに来てる初心者の方で、靴で損してるように見える方も割といます。

靴は本当に大事です。
スポットの路面や障害物の材質、その日やろうと思っている動きなど、シチュエーションに応じて複数の靴を使い分ける人も結構います。
それくらいシューズ選びというのは大切です。
前述しましたが僕はパルクール歴12年くらいで、これまで30足くらいは実際に履き込んでテストしてきました(試し履きして軽く確認したものや、店頭で触って調べたもの等も含めると、割と膨大な数をリサーチしてきたことになります)。
色んな靴を色んなシチュエーションでテストしてきたんですが、パルクールにオススメの靴には共通ポイントがたくさんあります。
特に初心者や未経験の方にはシューズ選びで損をして回り道してほしくないので、これから書いていくポイントをチェックしてみてください!

すべてをまとめた図

とりあえず、シューズ選びのポイントを1つの図にまとめました。
初心者の人とかがシューズ選びの場面で困った時、「とりあえずこの図を見ればOK」という感じの雛型を目指して作りました!

すべてをまとめた図

見てもらえましたか?
人によって差がある部分は、「クッションの厚さ」だけです
それ以外のポイントに関しては、基本的にはチェックする部分は誰でも同じです。
「どうして厚い靴は初心者向けなの?」「ゴムの凹凸が浅いってどういうこと?」などの詳しい説明や解説は、今から始めていきます↓

………………………………………………………………………………………………………

クッションの厚さ

結論から言うと、初心者の方はクッションが厚めの靴がオススメです
クッションが厚いのと薄いのとでなんとなく違いがイメージできますか?
靴底が厚くてクッションのしっかりした靴は着地の衝撃から足を守ってくれそう、その通りです。
靴底が薄くてクッションの弱い靴は足が痛くなりそう、その通りです。
まぁ厳密に言うと、メチャクチャ上手い人は小学生の上靴みたいなペラペラの靴を履いていてもへっちゃらなんですが……初心者の方だとなかなかそうは行きませんよね。
とりあえず膝とか傷めないようにある程度クッションの厚いシューズを選んでおこう、というのは大枠では正解です。
筋力や着地の技術に自信が持てるようになるまでは、無理せず靴のクッションに頼っておいて大丈夫です。

ペラペラの靴。テクニックがハンパない人はこの状況でも攻める

しかし、ここからが本題ですが、闇雲に厚ければいいわけではありません。
個人のレベルや体格によって「適切なクッションの厚さ」というものがあります。
……なんか難しくなりかけましたが、要するに「薄すぎると足痛いからダメだけど、厚すぎても逆に動きにくいから、丁度いい塩梅にしましょう」くらいのことです。
薄い靴にも厚い靴にも、それぞれメリットとデメリットがあります。
何がどう違うのかを理解したうえで、自分はこのくらいの厚さがいいかなという擦り合わせをしていきましょう。

厚い・薄いの目安

で、どのくらいが自分にとって丁度いいのかという話ですが……そもそも「薄い・厚い」ってどれくらいのことを言ってるの?という話ですよね。
そこで、まず初めにスニーカーの中でも割かし有名な、つまり皆さんとイメージ共有できる確率が比較的高いものを例に出して、目安を見ていこうと思います。
厚さ・薄さを客観的に見るために、10点満点で測りたいと思います。数字が若いほど薄いということです。
僕の体感だと、初心者の方にオススメの靴は厚さ5点以上のものというイメージです。
どれも履いたことないよ!という人は、お手持ちのシューズがどれに近い部類かを見ながらイメージしてもらえればと思います。

例えば、VANSのオールドスクールは3点くらいです。
超定番だし、持ってる人も多いのではないでしょうか?
これはかなりクッションが弱い部類に入ります。
オールドスクールで思いっきりジャンプしてレールとか土踏まずで捉えたり、カカトで接地してダッシュするとかなり足痛くなります。

ランニング初心者クラスのためのエントリーモデルのランニングシューズなんかはかなり厚い部類に入りますね。7点~8点とかが多いイメージです。
初心者の方だとこれくらいの厚さが安心だと思います。

オールドスクールで思いっきり攻める。ある程度レベル高くないとマジで難しい

他にもVANSのスケシュー(普通のeraやauthenticです、プロモデルは除きます!)やプーマのスウェード、コンバースのオールスターなんかだと軒並み2点~4点くらいです。
スケートシューズやコートシューズ系は見た目は良いですがクッションが弱いものが多いので、初心者の方は注意が必要です。

逆に厚いものですが、例えばNIKEのエアマックス90なんかはめちゃくちゃ厚い部類に入ります、9点とかです。これ履いてると基本的に足裏を痛める心配がなかったくらい厚いです(厚いだけでなく「硬い」ことも関係あるんですが、これについては次のポイントで説明します)。

クッションの厚い・薄いについてですが、これくらいのイメージです。
なんとなく掴めましたか?
初心者の方にオススメの靴は厚さ5点以上のものというイメージです。
なぜある程度の厚みがある方が良いのか、という理由については今から説明します
それじゃあ、「厚いシューズのメリット・デメリット」「薄いシューズのメリット・デメリット」を詳しく見ていきたいと思います↓

厚いシューズのメリット・デメリット

まずは厚いシューズです。
厚いことのメリット・デメリットとしては以下のようなものがあります。

【メリット】
ジャンプや着地のショックを比較的やわらげることができるので、見えないダメージが蓄積されにくい。
・土踏まずやカカトが保護されているので、思い切って動ける。

【デメリット】
・足裏の感覚が鈍くなるので、動きの繊細さは多少損なわれる。
・クッションが厚いということは、自分の力もクッションに相殺されるということ。
・着地などが楽になる分、靴頼みな動き方になっちゃうかも。

まず【厚いことのメリット】です。
クッションがしっかりしているということは、本来体が負担するはずのインパクトをシューズが代わりにやわらげてくれる、その割合が多いということですね。
薄い靴を履いて攻めまくっていると足の負担ヤバくて、次の日も筋肉痛すごかったり足痛かったりするんですが……。
ある程度厚い靴だと、多少無理しても翌朝ノーダメージで済んでることが多いです。
ほんの1cmくらいの厚さの違いなんですが、けっこうダイレクトに変わってきますよ。
また、土踏まずやカカトがしっかり守られているということは、弱点を気にせず思い切って動けるということでもあります。これは単純に楽しい。
やっぱりね、怖いジャンプとか克服しようって時に、そういうちょっとした道具の助けを借りるのって大事だと思うんですよね。
いきなり宙返りなんか外でやったら危ないから、まずは体育館でマット引いて先生に補助してもらおう、それと同じことだと思います。
厚い靴で防御力を上げてメンタル的な壁が克服できるのなら、それはとても意義のあることだと思います。
そういう点でも、クッションの厚いシューズは役に立ちます。

次に【厚いことのデメリット】です。
細か~いことかもしれませんが、足の裏と対象物との間の物理的な隔たりが大きくなる分、動きの繊細さは落ちます。
これはまぁ……初心者の人とか、運動不足解消のために楽しく体動かしたいな、くらいの人は特に気にしなくていいレベルの事です
何年もコンスタントに練習してきて、もっと高みを目指したい!みたいな層がけっこう神経質になるところです。
あと、クッションが強いと外から受ける力だけでなく、自分がモノに伝える力も靴に吸い取られてしまうというのがあります。
これもまぁ……微々たることです。初心者の人にとっては誤差みたいなものです
他にデメリットを挙げるとすれば、ずっと厚い靴を履き続けていた場合、動くのが楽になる分フォームやテクニックを意識する習慣が身に付きにくいかも知れません。
適当に動いてても、ある程度は靴が代わりに衝撃吸収してくれるわけですからね。
この辺りは、自分のレベルに合わせて徐々に靴を変えていけば問題ないと思います。
目安としては始めてから半年や1年経って、最初から履いてたシューズが壊れてきたら、次は今までより少しだけソールの薄いものにしてみる、とか。
いきなりペラペラなものにする必要はないです。

クッションの厚い靴はある程度足を保護してくれるので、初心者の方や、体重が重くパワーのある人、筋肉量の少ない女性にオススメです。

薄いシューズのメリット・デメリット

つぎは薄いシューズです。
薄いことのメリット・デメリットとしては以下のようなものがあります。

【メリット】
・足裏の感覚が鋭くなるので、壁やレールで滑ったり踏み外しにくくなる。
・足の力を地面や障害物へダイレクトに伝えやすくなる。力が入りやすくなる。
・クッションに頼れない分、トレーニングとしての効果は上がる。筋力や着地のテクニックはイヤでも鍛えられる。軽い動きならリハビリにも◎

【デメリット】
・土踏まずや踵など、足の裏を打撲で傷めやすくなる。
・クッションに頼れず衝撃吸収の難易度が上がる分、筋肉や関節、骨にダメージが溜まりやすくなる。

まず【薄いことのメリット】です。
ソール(靴底のことです)が薄いシューズは足裏と対象物との物理的な距離が短くなる分、自分が本来持っている筋力や足裏の感覚を発揮しやすくなります。
これは自分で練習していてもはっきり実感します。
クッションの薄いシューズを履いていると、

  • ジャンプ力が少し上がる
  • 壁系の動きが楽になる
  • プレシジョンでぴったり止まりやすくなる
  • 細い足場での感覚が冴えるので怖さがマシになる

とかは実感としてありますね。
また、シューズのクッションに頼れる幅が減る分、筋肉をいつもよりしっかり稼働させて鍛えられているなという感覚もあります。
足をケガしてしばらくまともに動いてなかったよ~という人には、リハビリの意味でも効果があると思います(あくまでも軽い負荷の動きにしましょう)。

次に【薄いことのデメリット】です。
デメリットは、一言でいってしまえば怪我のリスクが高まるということですね。
薄いシューズでの着地の際、細いレールや障害物の角っこを土踏まずで捉えてしまうと……ジャンプなどで勢いがついている場合は、最悪一発で負傷退場になりかねません。
そもそも土踏まずというのはその名の通り、あんまりモノを踏んでいいようには出来ていません。
また、クッションの弱い靴を履いている時に誤ってカカトを地面にぶつけたりした場合もかなり危険です。
全国の初心者講習で良く言われている事ですが、パルクール的には基本的にカカトで着地するのはNGです
普通に生活している分にはあまり意識しないと思いますが、カカトは薄い皮下脂肪で覆われているだけで、衝撃吸収の機能などもありません。骨です。
ふかふかのランニングシューズを履いていると気づきにくいですが、そんな部分を無防備に硬い地面と衝突させてしまったら……まぁ痛いですよね。普通に打撲です。

また、そういった事故を上手く回避して練習出来ていたとしても、今度は体にじわじわ蓄積されていく見えないダメージがあります。
僕自身、今まで裸足寸前みたいなシューズでバカみたいな距離を飛ばして土踏まずやカカトを破壊してきましたが……。
そういったケガを上手く回避していても、知らず知らずのうちに溜まっていた足の骨や関節、腱、筋肉への負担がどこかで臨界点を越えて「あれ、なんか足痛ぇな」みたいになったこともたくさんあります(パルクールでよくあるケガとその対処方・予防法についてはこちらで解説しております!→ https://idojutsu.jp/safety/)。

クッションの薄い靴は、パワーやテクニックをある程度増強できる代わりに、いざという時にケガをしやすい弱点がカバーできなくなるという諸刃の剣的な側面があります。

柔らかさ

柔らかさというのは、ソール(靴底)やアッパー(足の甲を覆うガワの部分)の柔らかさのことです。
たとえば、ランニングシューズは柔らかいですし、革靴は硬いです。
そして、パルクールに使う靴は、基本的には柔らかい方が良いです。
なんでかって、柔らかい方が動きやすいからです。 これもイメージしやすいと思います。

【柔らかいことのメリット】
・走ったりジャンプしたりしやすい
・地面や障害物の感触をつかみやすい

具体的に柔らかいと何がいいのかと言うと、足裏や指先の自由度がアップするので動きやすいよね、という話です。
新品の靴をお店で触ってるだけでは分からないと思いますが、普段僕らが使ってるような靴って意外と簡単にひしゃげたり曲がったりするんですよ。
使い込んだ靴は、足の甲側にも裏側にもぐんにゃり曲がったりします。 そのくらい、良いシューズってけっこう簡単に変形するんですね。
で、そうなるとソールの硬い靴なんて履いてられない……とまでは言いませんが、やっぱり柔らかいと動きやすさが全然違います
パルクール用に買ったシューズを最初は普段履きにして、わざとくたびれさせてからやっと使い始める人もいるくらいですからね。
この辺は慣れてくると実感できると思います。

靴がぐんにゃり

海外トレーサーを中心に、ムーブメントの世界では大定番のフェイユエ君です。曲がる靴はここまで曲がる。

硬い靴って言うと、例えば前述の
・VANSの有名どころのもの(オールドスクールやエラ、オーセンティック)などの安いスケシュー系 ・pumaのスウェードやadidasのスタンスミスみたいなコートシューズ系
・バッシュ系全般
とかです。
こいつらはカッコいいですが、お世辞にも柔らかいとは言い難い。
上の画像みたいにってのはさすがに無理ですが笑、オールドスクールとかがそこまで曲がってくれないというのは想像できると思います。
もちろん見た目も大切ですが、機能面より見た目にステータス振っちゃおっかなと自然に思えるくらいのレベルになるまでは、気を付けた方が無難ですね。

あと、靴って新品はどれでも多少は硬いと思います。
大抵は履いていくうちに徐々に柔らかくなっていくので、実は新品未使用時の硬さはそこまで気にならないことも多いです。
「……え、じゃあ履いてるうちに柔らかくなってくれる靴と、ずっと履いてても硬いままの靴ってどうやって見分けるの?」とお思いでしょう。
ランニングシューズや、ランニングシューズベースのスニーカー(レトロラン系って言うんですかね)なら、基本的には大丈夫だと思います。
逆に、前述の「硬い靴」たちは、履き込んでもそんなに使いやすくはならないかなという感じです。

◆オマケ
さっき「2.1 厚い薄いの目安」でチラッと触れた「エアマックス90は厚いだけでなく硬いので、防御力がハンパない」という話なんですが……。
単純な足裏の防御力で考えると、「剛性」という意味では硬いシューズにも利は無くはないです。
ソールが強固であればあるほど、足裏は守られるわけですからね。
ですが、そこに依存してしまうのは、もう考え方がパルクール的ではありません。
主役が自分ではなく靴になってしまうからです。
恐怖心克服のためのサポートアイテムとして活用するのは問題ありませんが、そこに頼りっきりでメチャメチャな攻め方をしていると、どこかで「足裏以外の部分」で大変なケガをすることも考えられます。

軽さ

靴の軽さについてです。
これは言わずもがな、軽い方が良いです。
靴って、位置的には体の末端ですよね? ということは、遠心力の影響をモロに受けやすいということです。
Tシャツ一枚でいるのとパーカーを着るのとで、歩きやすさに違いを感じる人はなかなかいないと思います。
でも、この数百グラムの違いが「胴体」から「足の先」の数十グラムになると、急に感覚がグッと違ってきますよね。
このように、靴の軽さで動きやすさも結構変わってきます。
クッションや耐久性などとの兼ね合いもあるので構造上多少重くなるのは仕方ありませんが、あまりにも重すぎるとNGです。
パワーがある人は重さも上手くコントロールできるかも知れませんが、体重の軽い人やテクニックが充分身についていない人は、避けた方が無難ですね。
先ほどからやり玉に挙がっているスケシュー系、コートシューズ系、バッシュ系は重い靴が多いです。
例外はありますが、一般的に軽い靴はソールが薄く柔らかく、重い靴はソールが厚く硬い傾向があるように感じます。

グリップ(滑りにくさ)

グリップ、靴底の滑りにくさです。
これもかなり重要です。 滑ったらマジで危ないですからね。
本当に上手い人は、靴なんて何でもいいよと気にしなかったり、その悪条件を逆手にとって楽しんだりしますが……九分九厘の人はそうもいきません。
特に初心者の方なんかは、折角やる気もポテンシャルもあるのに靴がイマイチで滑って上手くできないとか、そういう損をしてほしくないです。
そのためにも、グリップの良いシューズを見極める知識が大切です。

で、グリップの良いシューズってどんなの?という話ですが、アウトソール(靴底)が全てを決めます。
ソールの素材と、パターン(形状)です。

靴底の素材についてですが、まず大前提としてゴムであること。これは必須です。
ランニングシューズやレトロラン系のスニーカーで、ゴムではなくウレタン地の部分が大きく露出している靴ってあると思うんですが、そういうのは避けた方が良いです。
ウレタン地の部分は滑りやすいし、耐久性も良くないです。

ダメなソールの例

こういうのん。これは白いとこも一応ゴムが貼ってありますが、黒いゴム部分に比べるとグリップがかなり弱い。頼れるのは実質つま先とカカトの黒いとこだけです。

ダメなソールの例

こんな風に、ソールの一部が欠けているものも良くありません。細い足場とかでハチャメチャに危険です

ソールの素材はゴム底なら基本的にはOKなんですが、掘り下げるとゴム底にも質の良し悪しがあります。
ゴム底は「光沢の少ないマットな質感で、粘り気のあるもの」が良いです。
ゴム底がテカテカしてて硬いものはどちらかと言うと滑りやすいです。
でもまぁ、「3.柔らかさ」で触れたように靴って履いてるうちに徐々に柔らかくなってきてくれるので、初心者の方はそんなに気にしなくていいです。
多少ゴム底が硬くとも、履いているうちに自然とグリップは向上してきますので。
ソールの素材についてはこんなもんです。

次はソールのパターン(形状)についてですが、これは次の「6.ソールの形状」へ。↓

◆オマケ
ちなみに個人的な経験則から言うと、グリップが良いソールの色は「黒」ではないか?という気がします。
ソールの色ってだいたい「黒」「白」「ガムソール」辺りが主流だと思うんですが、同じモデルの色違いを履き比べた時に、ソールが白のものより黒のものの方がグリップが良かった、ということが確かにありました。
ゴムの材料の違いがグリップの良し悪しに微妙に響いてくる、ということがあるのかも知れません(この言説に関してはまったく僕の主観で、客観的な証拠は何もないです。要検証。そこまでこだわるのはガチ勢だけです)。

ソールの形状

シューズのゴム底がどういう形やデザインになっているか、というのはシューズ選びでもトップレベルに大事です。
グリップやソールの耐久性とも密接に関係してくるので、必ず押さえたいポイントです。
じゃあどういう形だったらいいのか?

  • 凹凸が浅い
  • 区切り無しの一枚のゴムで形成されている
  • ゴムがつま先まで巻いてある

押さえたいポイントはこのあたりです。

凹凸が浅い

ダメなソールの例

エアマックス90のソール。前足部のトレッドがかなり凸凹してます。あんま使いたくない。

良いソールの例

浅いっていうとこれくらいです。溝がほとんど目立ちませんよね。

ちょっと想像してみてほしいんですが、靴底のゴムの凸凹が浅いほど、物に体重をかけた時に靴裏との接触面積が増えますよね?
グリップ力は、物体とシューズとの接触面積が大きいほど強く感じられます(※注意!ここについては必ず注釈↓を読んでください、エセ科学はよくない!) ので、あんまり凸凹が主張しすぎているものだとグリップが悪かったり、ちょっと動きづらく感じることがあるかもしれません。
僕の感覚だと、1cm以上出てると「うわ出てんな」と思っちゃいます。
でもまぁ、多少の凸凹は履いてるうちにすり減って無くなっていくので、初心者の方だったら基本的には神経質にならなくても良いと思います。
単純にシューズの寿命的な意味でも、凸凹が浅いとその分ソールのHPが少ないということですしね。

※注釈
「グリップ力は、物体とシューズとの接触面積が大きいほど強く感じられる」と書きましたが……正しくは、物体の見かけ上の接触面積は摩擦力には全く関係がありません
ありませんが……他の諸条件も考慮すると、パルクールでは便宜上そう考えてしまって良いと思います。
それはなぜか? 接触面積がより大きい場合、摩擦力そのものに変化はないですが、接触面を媒介にしてアクティベートされる筋肉が増えるので、より強い力が出せて滑りにくく感じる、という認識です。
摩擦力は加えた荷重に直接比例するので、凸凹が浅くなると接触面積が増えて摩擦力が強くなるのではなく、ソールが薄くなることによってかけられる力が強くなる、ということだと思います。
「2.クッションの厚さ」で触れたことと同じ原理ですね。
あと、物理の中でも摩擦っていうジャンルは結構奥が深いらしく、加えて対象が「ゴム」になると、定説や諸法則についても色々と確証が持てなくなってくるみたいです。

区切り無しの一枚のゴム

良いソールの例

こういうのん

ダメなソールの例

これは良くない。ゴム片が複数に分かれてます。このパターンだと、使ってるうちに一枚ずつ剝がれてきます。

これってどういうこと?とピンとこない人も多そうなので、例によって画像を用意しました
悪い例の画像だと、靴底が壁や地面と擦れていくうちに、区切り目からゴムが剝がれてきてしまうことが想像できると思います。
初心者にありがちな、靴がダメになってしまう原因第1位ですね。
実際僕も、このことを理解していなかった頃、買ったばかりの靴を一瞬でゴミ箱行きにしてしまったことがあります。
ゴム片が捲れて下のクッション地が剥き出しになってしまうとグリップは期待できないので、万が一こうなってしまった場合は早めに靴を交換することをオススメします。
ゴムの区切り目が無いものだと、摩耗こそすれど、べろんと捲れる心配はありませんよね。
靴の耐久性が全然違ってくるので、ここは是非とも気を付けたいポイントです。

ゴムがつま先まで巻いてある

良いソールの例

こういうのん。てか大体こうですよね?

ダメなソールの例

つま先に注意!ダメなパターンです。こういうデザインはあんま見ないですが、一応気を付けて。

上の2枚の画像を見比べてみてほしいんですが、2枚目のプーマの靴はつま先部分にゴムが巻かれていないのがわかると思います。
レトロラン系のスニーカーとかでこうなってるものってあんまり見ないですが、一応ここは気を付けた方が良いです。
靴のつま先部分は特に壁系の動きで頻繁に擦れるところなので、ゴムがつま先まで巻かれていないとアウトソールが簡単に剝がれてしまいます
スケシュー系とかはデザイン的にこの限りではありませんが、アウトソールが簡単に剝がれてこないかどうか、レトロラン系の場合は最低限気を付けた方が良いです。
ちなみに僕はこの靴を持っていたのですが、5回くらい履いたらゴムがつま先から思いっきり捲れました。笑
靴って安い買い物ではないので、簡単に壊れたりしないかどうか、しっかりチェックしておきましょう!

耐久性

耐久性、靴がどれだけ長持ちするかということです。
ソールの耐久性に関しては「6.ソールの形状」で説明した通りですが、他にもアッパー(足の甲を覆うガワのこと。靴底以外の全部だと思ってください)が破れたり穴開いたりしてきます。
トレーサー御用達のシューズの特徴として、アッパーの素材がナイロン、メッシュ、スウェードの組み合わせで構成されていることが多いです。
総合すると、軽くて柔らかいメッシュやナイロン生地をアッパーの大部分に使いつつ、物との接触が多い部分にはより頑丈なスウェード生地が持ってきてある、っていうパターンが多いです。
……って言われてもちょっとイメージ涌かないですよね。
実例を写真で見てみましょう。

良いソール素材配置の例

またこの靴。足の横とかつま先周辺はものに触れやすいのでスウェード、他はナイロンやメッシュで動きやすく。

で、壊れやすいポイント、どこを見ればいいのかという話ですが……。
具体的に言うと、小指の付け根の部分とか、親指の爪の真上の部分とかが壊れやすいポイントです。

壊れやすいところ

足の外側部分です。縫製が解けている箇所が、ちょうどロールの際に地面と擦れる部分です。ここがメッシュとか薄い素材だと秒で破れる。この靴は当該箇所が合皮とスウェードなのでへっちゃらです。

壊れやすいところ

つま先部分に布片が斜めに縫い付けてあります。ここは親指と擦れる部分なので、普通にランニングとかで使ってても破れやすい箇所です。

ちなみに……。
単に頑丈である、壊れにくいというだけなら、バッシュみたいな全面合皮の靴は耐久力最強です。
でも、全部が合皮だとどうしても重量が無視できない重さになっちゃったり、皮が硬いせいで動きにくかったり、みたいな難点があります。
逆に、全面が薄いメッシュオンリーの超軽いランニングシューズとかだと、動きやすさは最強ですが、耐久性は最低点です。
ちょっと擦れたり引っかかったりしただけでも、バリっといっちゃうかもです。
他の要素との兼ね合いも考えると、上で説明したような適材適所の配置が理想的ですね。
(そんな靴どこにあんねん!とお思いの方、こちらでメーカーごとのナイスモデルを紹介しております!→https://idojutsu.jp/category/shoes/)

パルクールに使う靴って、割と消耗品扱いです。
これならうまく使えば1年はいけるな、とか購入時に考えちゃいます。
普段履きのスニーカー1年で履き潰します?汗
ただでさえ靴の寿命を早めるような使い方をしているんだから、ちょっとでも長持ちさせたいですよね。やっぱお金かかるし。
ましてやその靴が、とても動きやすくて自分に合ってる、デザインが気に入ってる、とかだったら尚更。
そんなにめちゃくちゃハードに練習してなければもう少し長持ちするかもしれませんが、僕なんかだと大体半年~1年が関の山です。
少しでも靴を長持ちさせたい方は、最低2足持っておいて、交互に使うようにすると寿命が延びます。
シチュエーションや自分の調子に合わせて使い分けれるようにしておくと、練習がより充実すると思います。

ちゃんと足にフィットする?

クッションやらソールの形やら色々と見てきましたが……。
最後のチェックポイントとして、実際に履いてみた時にちゃんと自分の足にフィットするのか?という問題があります。
普段履きならどうでもいいですが、パルクールに使う靴は必ず試し履きをして履き心地を確認することをオススメします。
適切なフィッティングのために注意すべきポイントとして、

・足の形に合うかどうか
・適切なサイズ選び


があります。

足の形に合うかどうか

人によって足の形は違うので、どうしても合わない靴っていうのはあります。
パルクールシューズとして良さげな一足を見つけたとしても、当たり前ですが、履けなかったら意味ありません。
足に合わないんだったら無理に履く必要はないです。
「足に合わない」っていうのは、「靴ひもをどれだけキツく縛っても脱げそうな感じがある」「我慢できないレベルで痛い、靴擦れが一生収まらなくて出血する」とかです。
「ちょっとタイト目なフィット感だな」くらいだったら、ある程度は履いてるうちに素材が柔らかくなって伸びてくるので、そこまで神経質にならなくても大丈夫です。

合わない靴を無理やり履いてるとマジで損です。
特に「靴ひもをどれだけキツく縛っても脱げそうな感じがある」、これは気を付けてますね。
なんでかっていうと、つま先で踏ん張れなくなるからです。
合わない靴は、つま先で踏ん張ると脱げるんです。
パルクールの動きで、つま先で踏ん張れないって結構致命的です。
短い距離の助走とか、でかいキャットとかで足に力が入らないってことですからね。
この手の靴は、サイズを小さくしても絶対脱げます。
そもそも型が合っていないので、根本的な解決にはならないんですね。
実際僕も、パルクール界ではかなり有名なモデルだけど、どうしても踵がすっぽ抜ける感覚があって泣く泣く採用を見送ったシューズもあります。

対策としては、「シューホール(靴ひもを通す穴)を一番上まで使う」というのがあります。
お店で売ってるデフォルトの状態だと一番上の穴が使われていないことがあるので、カカトの抜けが気になる場合は靴ひもを一番上の穴まで通しきることでホールド感をアップできます。
靴ひもが長くて気になる場合も、これで少し短くできます。長すぎると引っかかって危ないので。

適切なサイズ選び

あと、サイズ選びも超重要です。
小さすぎると履けなかったり足痛くなるのは当たり前ですが、あんまり大きいと靴のつま先部分が余って引っかかったり踏み外したりしやすくなるので危険です
靴ってメーカーによって履き味に大まかな違いがありますし、モデルごとに見てもサイズ感はバラバラです。
「普段26cmだしこれも26cmでいいでしょ」みたいな感じで、数字だけを頼りに試し履きせずネットで注文するのはNGです。
僕は靴のサイズは大体26.5cmですが、下は25.5cm~上は27cmまで着用サイズに幅があります。
つまり、25.5cmの靴と27cmの靴とで、履き心地が同じものがあるということです。
試し履きせずにシューズを手に入れるのは、ギャンブル的なところがあるのでオススメはできません。
実際、僕もこれで痛い目を見たことがあります。
試し履きせずにネットで買ったシューズがワンサイズ大きくて、「でもまぁ、せっかく買ったんだし履かなきゃ」と思って使ってたら、大きすぎて余ったつま先がレールに引っかかって転倒してスネに穴が開いたことがあります。
……この記事を読んでる方には、やっぱりこうはなって欲しくないです。笑

前項と併せて、最低限「足に合わない靴を無理に履かない」「サイズ選びで妥協しない」というのは念頭に置いておいてほしいです。

具体的なオススメモデルは?

チャートだけ見てすぐここまでスキップしてきた人、賢いです。
はじめから全文辿ってここまで来てくれた人、勉強熱心で素晴らしい!お疲れ様です。笑
ここまでは、パルクールシューズの選び方を細かく解説してきました。
「ほんで、結局どれがオススメなん?」という声がそろそろ聞こえてきそうなので、お待ちかねのシューズ紹介に入りたいと思います!

思いますが……。

……もったいぶるようで申し訳ないんですが、オススメシューズ全てをこの記事にまとめてしまうとあまりにも膨大な長さになってしまうので、メーカーごとにページを分けました!
ここから一覧で見れます!→ https://idojutsu.jp/category/shoes/
大手スポーツブランドから、日本では馴染みのないメーカーのものまで紹介していきます。
こうやって記事を書いているうちにも新しいモデルもどんどん発売されていくので、ホットな情報をお届けできるよう各ページは逐次更新していこうと思ってます。
皆さんもまたお時間ある時に見てみて下さい……というか、いちいち確認するのは面倒なので、Twitterで記事のアップデート情報をチェックしてもらったら楽チンです。→https://twitter.com/idojutsu1

まとめ

パルクールシューズの選び方については、冒頭の簡単な図で確認してもらいましたが……。
本編の解説の内容をポイントだけ抜き出しておくので、もう一度おさらいしておきましょう。

■クッションの厚さは個人の好み
・クッションの厚い靴は、初心者や、体重が重くパワーのある人、筋肉量の少ない女性にオススメ
・クッションの薄い靴は、中級~上級者向き

■パルクールに使う靴は、軽くて柔らかい方が良い
・軽い&柔らかい:ランニングシューズ、レトロラン系スニーカー
・重い&硬い:スケートシューズ、コートシューズ、バッシュ系

■グリップはアウトソールの素材とパターンで決まる
・ゴム底なら基本的にはOK  
・ゴムの凹凸が浅い方が良い  
・区切り無しの一枚のゴムであること
・ゴムがつま先まで巻いてあること

■耐久性にも気をつけよう
・アッパーの素材がメッシュやナイロンとスウェードと、バランスよく使われていると良い
・メッシュだけだと脆すぎるし、合皮だけとかだと逆に重すぎる

■フィーリングで履きやすいかどうか
・必ず試し履きをすること
・足に合わない靴は無理に履かない
・サイズ選びで妥協しない


パルクールに向いているシューズには、どれも共通点があります。
しかも、わざわざ履いてみるまでもなく、「見たらわかる」レベルのことです。
知識さえあれば、靴選びがグッと楽になるはずです。
正しいシューズ選びで、快適なパルクールライフを!

◆オマケ
どうしても条件をすべて満たすものが見つからない、ちょっと難アリな部分あるけど見た目が気に入ってて使いたい、とかあると思います。
普通のスポーツと違って公共空間を使うこともあるので、あんまりダサい格好はしたくないですよね。笑
そういう時は、シューズ選びのポイントで妥協してもいい優先順位を決めるといいです。
チェック項目をオールクリアしてるシューズなんて、ハッキリ言ってなかなかお目にかかれません(その希少なモデルたちを上のリンクで紹介しています!笑)
個人的には、「履きやすさ」はマストで欲しいです。
次点でアウトソールのパターンと耐久性
やっぱりお気に入りの靴が壊れるのは悲しいですからね。
逆に厚さ、柔らかさ、軽さ、グリップとかは多少妥協してもいいかなって時もあります。
この辺は、自助努力で何とかできる範囲だからです。
こんだけ散々書いてきておいてなんですが、上手い人は靴で言い訳をしません。
ガチガチに気にするような場面でなければ、これくらいの妥協はアリかなと。
最低限求めるポイントを押さえてるシューズだと、練習するつもりじゃなかったけどちょっと動きたいなって時とかでもサッと動けて便利です。

補遺:シューズ依存症

パルクールって道具が出てこないスポーツじゃないですか?
それって「道具を使うなんて軟弱者のやることだ」とかそういうんじゃなくて、最低限の装備でナチュラルなトレーニングをしましょう、っていうことだと思います。
逆に言えば、真っ当なトレーニングのために正当な理由があるならバンバン道具使ってけばいいと思います。
だって皆んな、マット使うために体育館行くし、擦りむいたところは絆創膏貼るし、僕なんてコンタクトやメガネに頼らなかったら日常生活もままなりませんからね。笑
道具に頼ること自体は悪くありません。
問題は、「道具に頼らないと何もできない」という依存症状態になってしまうことであり、そこからの脱却がパルクール的な考え方のポイントです。

この「道具」を「靴」に置き換えると?

「この靴じゃなかったらこの動きはできない」というのは、パルクール的にはあんまり良くないことです。
その場合、その動きを可能にしているのは自分の体ではなく、靴です。
パルクールの主役が靴になってしまっている。
本来、靴は自分自身のポテンシャルを引き出すためのサポートアイテムです。
靴に全てを任せていたら、いくら練習しても自分自身のコアな部分のレベルは上がりません。
その前提でいくと、上で紹介してきたような「理想のパルクールシューズ」って、我々とはどういう関係性になるんでしょう?
それを考える時に、「目立たない」というのがキーワードになってくると思います。
「目立たない」→「存在感が無い」「主張しない」「普通」と言い換えてもいいかも。
「目立たない」というのは、重いとか動きにくいみたいなマイナス要素が無いだけでなく、不必要なプラス要素も無いということです。
今まで大量にシューズを試してきましたが、本当にいいなと思った靴の履き味は総じて「普通」です。
パルクールシューズ選びって、「どれだけ普通の靴を探せるか」みたいなところがあります。
普通であればあるほど、自分の素のポテンシャルだけで勝負せざるを得なくなってきます。
そうなってくると、俄然レベルは上がります。靴に助けてもらえる幅が少なくなるわけですからね。
でも、守ってもらうべきところは守ってもらいたい。いきなり明日からずっと裸足で生活しろと言われても、無理な話です。
スパルタに行き過ぎると怪我するし、じゃあそもそも靴要らないじゃんという話になってしまう。
繰り返しますが、道具に頼ることを否定しているわけではありません。
頼っていい、だけどその度合いは徐々に調節していく必要がある。

初心者の人とかはまだそんなこと考えなくていいですが……一応、パルクールって本当はそういうものです。
表面的なアクションの部分だけでなく、パルクールという方法論の核心部分について各々意見を持ってもらえると……僕は知ったこっちゃないですが、パルクール創始者やエヴァンジェリスト(伝道師)の人たちは喜ぶと思いますよ。笑