【パルクール世界大会】NAPC7のスキルコンペ内容解説!【コラム】

2019年8月19日

2019年8月16~18日、カナダのバンクーバーで第7回目となる”North American Parkour Championshios(NAPC)”が開催されました。
かなり大きなパルクールイベントで、世界各地からトップレベルのプレイヤーが参加しています。
ちなみに日本からは、「山本華歩(https://www.instagram.com/hanaho_yamamoto/)」さんがフリースタイル部門で決勝進出という大活躍でした!

この記事では、同大会の「スキル部門(スキルコンペ)」に焦点を当てた内容解説をしていきます。「スキルコンペってなんなん?」って人は、こちらの記事を見てみて下さい→https://idojutsu.jp/skillcompe/

予選

↑の動画の52:00~1:23:00頃です。

プログラムでは予選の前に「予選の予選」が設けられており、そちらは別のジムで行われたみたいです。
本予選に出場できるのは、「予選の予選3位以内の3名+各地域予選(6か所で実施された)の優勝者6名+前回のファイナル出場者5名」の計14名です。

予選は「9つの課題を30分以内にコンプリート(全クリできなかった場合はタイムアップ時のクリア数で優劣をつける)」というルールです。
前回優勝のティム・チャンピオンを始め、ジョー・ヘンドーやダリル・スティングレー、ブロディ・ポウソン、brewmanのジョーダン・タイラー・リーとかが出てます。
アシガルのアンディは、残念ながら今回は足首のケガにより出場を見送った模様です(個人的にはアンディの妙技を一番楽しみにしていました)。
9つのセクションそれぞれに審判が付いていて、ちゃんと課題のメイク要件を満たしているかチェックされます。
ジャッジの中にカイ・ウィリスもいましたね。

前回のNAPCスキルコンペは予選の段階では割とトリッキーな動きが目立っていましたが、今回はもう予選の段階から割とマッシブめな課題が多いですね(アンダーバーでレールプレ、ポールを蹴ってレールストライド、連続180、ストライドからの180プレ、ストライドからの90°方向転換したプレ、レールコング→プライオ、細い足場で助走をとって下りのモンプレ、上がりのラシェからのキャット、ダイノ系の課題。詳しくは動画見て下さい)。
ジャンプ力やスティック力はもちろん、プレとヴォルトの複合、180も含めた壁系、鉄棒系、高さ慣れ、イレギュラー要素とあらゆる移動系の動きがいっぺんに試される内容になってます。
このまんべん無さがスキルコンペの重要なところです。
いずれも多少のトリッキーさは要求されますが、前提としてはある程度のマッシブさに対応可能であることが求められています(前回のNAPCスキルコンペの予選は結構トリッキー方向に寄せた課題が多かったので、ふるい分けの基準が少し変わってきますね)。
特にストライドからの180プレが結構デカくて、あのブロディが割と何回もトライしてたのが印象的でした。
メンツ的に距離飛ばせる人が多かったんですが、皆何回も手前に弾かれていてオーバーで落ちる人がほとんどいなかったので、かなり大きい距離だったんでしょう(ティムはワンパンで倒してましたが汗)。
開始から15分弱でティムが課題をコンプリート、一抜けです。
クリアタイムがダントツで早かったです。
そのあとジョセフとダリルもコンプリ―ト、25分くらいです。
4番目にブロディがコンプリート、そのあとは全クリした人はいませんでした。
このクリア順(課題を残した人はクリアした課題の数)をもとに、準決のアドバンテージが設定されます

準決

↑の動画の48:30~1:22:00頃です。

2日目の準決です。
準決の内容は「5つの課題を2分以内にクリアする」というものです。
トリッキー要素はどちらかというと準決で出してきましたね。

  1. フラットな壁でチクタク→レールストライド→縦レールにプレ
  2. ラシェストライド(右に90°方向転換)→上がりのプレ
  3. 左後ろに曲がる180キャットバック
  4. 右後ろに曲がるレールへの180プレ
  5. モンキーキャット→ダイノ(壁から出っ張っているブロックに触れないように)

どの課題から始めるかは自由です。
一度諦めたものを後で戻ってリトライしてもOKです。
あと、クリア数やアテンプト数によって「ポイント」が付与されるんですが、今回のゲームではこの「ポイント」の高さを競うみたいです(単純なクリア数だけだと差別化が充分にできないので)。
つまり、決勝で1位になったとしてもポイントの差で優勝を逃すことがあるということです。
なので、予選の段階からスコアを気にしておかないといけないわけですね(ポイントシステムに関しては又聞きの情報なので、不正確な部分もあります!ご承知おき下さい)。
走順は予選のスコアが低い人からです。
早く抜けた人ほど、前の選手の試技を見てイメトレや準備をする時間が与えられているわけですね。

最初はジョーダン・タイラー・リーからです。若手の中でもかなりハイレベルなプレイヤーですが、最初に選んだチクタクとレールストライドのラインにかなり苦戦しました。
一旦置いてラシェストライドに取り掛かりますが、タイムアップです。
2分ってかなり短いですね……。
他の選手たちも基本的に全部苦戦してます。
唯一モンキーキャットのラインが比較的易しいかなという感じで、とりあえずクリアを1個確保しておくためにそこから取り掛かる人が多かった印象です。
逆に誰も出来なかったのが左曲がりの180キャットバックで、ほぼ捨てゲー状態でした。
各選手とも試技が終わって、ブロディとジョーとティムが1.4.5をクリアして準決を同率1位通過です。次いでダリルが4位。

準決ラウンドは、課題設定の仕方が良いですね。
どの課題にも何かしらのイレギュラー要素が含まれていて、枠にはまった型の練習だけでは対応しきれないようになっています。
180に関して、左右差を考慮してあるのも素晴らしいです。
その動きが得意なのは右か左かというのは人によって違いますから、手足の左右が決められている課題だと、もしかしたら運悪く苦手な方ばっかりが出題されて不利になっちゃうかも知れない。
逆にそれで有利に立って好成績を残しても、面白くないですよね。
スキルコンペで大事なのは、運の要素をできる限り取り除くことです。
全ての動きを左右両方できればベストですが、なかなかそれもシビアですし。
左右差を考慮したセッティングが行われたことは、今後の参考にしていきたいです。
あと準決ラウンドで個人的にヤバいなと思ったのが、1の「チクタク→レールストライド→縦レールプレ」です。
これは何が凄いかというと、「x軸,y軸,z軸すべての調節が求められる」ところです。
要は、上下左右前後、どの方向にも気を遣わなきゃいけないからメチャクチャ難しいってことです。
最初のチクタクからのレールストライドの入りの部分で、まず体をライナーに通すことが求められます(上下の調節)。
ストライドの入りはできるだけ低くライナーに、古事記にもそう書いてあります。
そしてレールを踏む位置。レールを足裏の適切なポイントで捉える必要がありますし、加えて体全体が前に出過ぎていてもダメです(前後の調節)。
最後に縦レールへスティック(左右の調節)。
この一つの流れの中で、すべてのタームで異なる方向へのバランスが要求されます。
この課題考えた人天才です。

決勝

↑の動画の1:18:30~2:07:00頃です。

決勝ラウンドは「3つの課題を10分以内にクリアする」というルールです。

  1. ラシェで縦レールへのストライドを経由して、90°方向転換しながら高さのあるレールストライド
  2. 180→ラシェ→プライオ→モンプレの直線ライン
  3. 180→ストライド→レールプレ→着地したバーからラシェプレ

前回の決勝ラウンドは「10分以内」ではなく「5手以内」というルールだったので、そこが変更ポイントですね。
今回は手数は無制限みたいです。
準決と同じく、どの課題から始めても、途中で課題を変えてもOKです。
決勝に駒を進めたのは6人。
準決を通過したブロディが故障により棄権したので、下の順位の人が繰り上げで決勝に進んだみたいです。
準決と同じく、走順は全ラウンドのスコアが低い順からです。

一人目はテイロン・マクベイ。繰り上がりの選手です。
③を選択して一発目で大フェイルです。
リカバリが上手く取れたので無傷でした。
このコースは高さがある上に角度もいやらしいです。
まず最初の180の壁の真ん中に穴が開いているので、それを避けながら斜めにいかなきゃいけない。
そこからのストライド→レールプレもまぁまぁキツい距離がありますし、そこからラシェに移る時の入り方にも制約があるのが、輪をかけて厳しい所です。
普通に手前にバウンスバックしてその流れでスイッチしてもいいならまだ難度は下がりますが、この場合は鉄棒の上から一気に倒立する形で一息に行かなければいないので、レールプレを確実にスティックできるだけの余裕も求められます。
体制を崩しながらも最後にはなんとかスティック出来たので良かったですが、やはり「大会だからってハッスルしすぎると危ない」という原理原則を思い出さされましたね。

2人目以降もかなり苦戦してます。このレベルのプレイヤーですら皆1個のオブザベに3分とか要るので、課題を3つ全部攻略するのは相当キツいです。
というか、そもそも3つ全部クリアするのはまぁ無理でしょという前提で、あくまでも選択肢を提示するための「3」という数字なのかもしれません。
前回の決勝進出者ダリルも③はクリアしましたが、左足を傷めた(または元々傷めていた?)みたいです。
注目はやはりジョーとティムです。
ジョーは③を4手目でクリアし、②を1回だけ試して終了です。
ティムは最初に②を1回だけ触って、すぐに③に移動してます。
③は2手目でクリア。ラシェの振りがかなり小さいにもかかわらず、安定したスティックです。
ティム・チャンピオンというとバー系がバケモノみたいな上手さですが、経験値の高さが垣間見られました。
次に②に戻って、都合2回目のトライで角を捉えてきます。
3回目ではほぼ成功だったんですが、少しだけ勢いがオーバーして着地点でちょこちょこ足踏みしてしまったのがメイク要件を満たしていないと判断され、クリア数は1個だけという審査になりました。
この②の課題については、実はティムは少しだけ不利です。
最初の180からラシェに移る時の間隔がかなり狭いので、高身長のティムには飛びついた勢いを上手く活用するのがかなり難しいセッティングになっていました。
逆にそこを上手く捌ければ、後のプライオ→コングはリーチを活かせるので有利でした。

審査の結果、ジョーとティムが同ポイントになってます。
ここから②の課題で直接対決ですが、二人ともなかなか決めきれず、 時間も押してたみたいで結局2人とも優勝扱いになったっぽいです(これも又聞きの情報なので、正確にどういう経緯だったのかはわかりません!ご承知おき下さい)。
個人的には「ティムは③もほぼ成功だったんだし、ティムの方が良くね?」と思いましたが、ジョーもティムも同アテンプト数かつ同クリア数でしたし、なによりポイントが同点でした。
惜しかったとかは関係なくて、結果として残った数字だけで判断したということですね。
それってかなりいいことだと思います。
「どのくらい惜しかったか」っていう定量的な評価は基準があやふやになってしまうので、その視点は思い切って除外して、アテンプト数とクリア数と全ラウンドのクリア順とで客観的な指標に基づいて計算したんだと思います。
公正さという点では、優れたジャッジ方式ではないでしょうか。

NAPC7は他にもフリースタイル部門やスピード部門があり、そちらも大盛況で見ごたえも抜群でしたが、忙しいのでスキルコンペ推進派の管理人としては今回はスキル部門だけを取り上げさせて頂きました!汗
ゲームへの参加自体はチケットをオンラインで購入すれば誰でも出場できるみたいなので、海外のレベルを実際に体験してみたいプレイヤーは、自分がどこまでやれるか力試しに参加してみるといいかも知れません!